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「Coyote」(佐野元春,2007)

コヨーテという生き物を、たぶんぼくはみたことがない。どうやら、オオカミの小型版といった感じらしい。ネット上で出てきた画像はオオカミそのもののようにみえた。「coyote」とは、スペイン語で「歌う犬」を意味するのだそうだ。

いつしかヒットチャートでどれだけ上位に食い込めるかは、そこに含まれているタイアップ曲の数に比例するようになった。タイアップが、どれだけヒットしたドラマのものであるか、どれだけハードにくり返し流れたCMのものであるか、で多少Weightが変わるものの。
そういった意味では『Coyote』(2007)はあきらかに売れ線からは外れている。タイアップ曲は、NTTドコモの企業CMに1曲使われているのみという地味さ。しかし、その曲の本当の良さなんてヒットチャートでははかれないことは明白なわけだけれども。

佐野元春のアルバムは毎回テーマやコンセプトがはっきりしている。
”このアルバムは、「コヨーテ」と呼ばれる、あるひとりの男の視点で切り取った12篇からなるロードムービーであり、その映画の「架空のサウンドトラック盤」”
今回のアルバムはこういうことだそうだ。

バック・バンドは違えど、全体的に前作『THE SUN』(2004)に通じるテーマを持ちながら、『THE SUN』では”家庭”的であったりprivateなシーンを唄っていたが、『Coyote』ではどちらかといえば”社会”的であったりpublicなものを唄っているようにみえる。その傾向は『THE SUN』の最後の2トラック「国のための準備」「太陽」あたりですでにみえていたのだが。このような、アルバム間をつなげるような手法を意識的に好んでおこなっているという記述をなにかで読んだことがある。『Time Out!』(1990)のエピローグ曲「空よりも高く」で轟く雷が、次作『Sweet16』(1992)のプロローグ曲である「ミスター・アウトサイド」の冒頭で再び轟くように。毎回テーマやコンセプトは異なるけれど、実はそれぞれがリンクしている。決して急激な変化を求めるのではなく、緩やかな成長を表現している。
日本のポップス史に輝く『Someday』(1982)からNY制作のラップ/ヒップホップアルバム『VISITORS』(1984)への流れのなかでさえも、『VISITORS』からの先行シングルには「Tonight」という比較的ポップ/ロック・テイストな曲を選んでいる。そこに描かれている都市は、佐野元春が暮らしていた東京や横浜からNYに舞台を移しているわけだが。

『Coyote』の話に戻そう。『Coyote』の主人公は実にcoolに”社会”というものを見つめている。ドラマのなかの世界ではなく、等身大のリアルな世界に生きて。
このアルバムきってのポップ・チューン「君が気高い孤独なら」では、何気ないステキな瞬間に”Sweet Soul, Blue Beat”とくり返す。タイトル・チューン「コヨーテ、海へ」では、歪んだ世界で”望みはたったひとつ 自分自身でいたいだけ”とはき捨てる。夢ばかり見すぎて足元がぐらついている世界に決別して。


コメント

COYOTE、美しい作品です。
どうしようもないこの世界に生まれた美しい作品。
詩人の紡いだ詩がPOP MUSICに昇華されて、僕のような一般人にも響きやすい形になって届いた。
100万枚売れないであろうこの作品に、それでも僕は100人分の賛辞を送り続けていきたい。

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